ロンドン滞在二日目。
この日は、ロンドンにやってきた最大の目的である、ヴィンテージコスチュームジュエリーの巨大倉庫を訪ねます。
前回のブログはこちら→「イギリス買い付け日記 DAY1」
その巨大倉庫は一般公開されておらず、中に入るには事前の予約が必要であったため、日本から倉庫のオーナーさんにコンタクトを取って訪問日時を決めました。
倉庫を訪れる約束の時間が午前11時だったので、それまでアンティークマーケットへ赴いて買い付けをすることに。
早起きしてホテルを出発し、通勤する人々に混じって電車で街へ出かけました。
目的の駅に到着。
高層ビルが立ち並ぶオフィス街を抜けてしばらく歩いていくと、街の雰囲気がぐっとクラシックなものに変わりました。
象の親子のブロンズ像が、美しく愛らしい。
目的の、屋内アンティークマーケットへ到着しました。
こちらの会場はなんと1876年に建てられたもので、ヴィクトリア時代から続くマーケットホール。
ロンドンでも有数の、古い歴史を持つアンティークマーケットなのです。
家具、食器、インテリア、ドレスやアートなど、ユニークなお品がたくさん。
ヴィンテージジュエリーのストールもちらほらあり、とても好みのお店に出会うことができました。
いくつか素敵なお品をセレクトすることができ、良い一日のスタートが切れました。
こちらのマーケットにもっと留まりたいところでしたが、次の約束の時間が迫ってきていたので急ぎ足で駅へ。
電車を乗り継ぎ、巨大倉庫へ向かいます。
道中、電車が技術トラブルのため止まってしまい迂回ルートを取ったり、迂回先の電車が行き先変更になって突然電車から降ろされたりと、なかなか大変な道のりでした。
やっとのことで目的地の駅へ降り立ち、ひと安心。
ついに、訪問を心待ちにしていた倉庫に辿り着くことができました!
圧巻・・!
なんとここには、1,000万個ものヴィンテージコスチュームジュエリーが、デッドストックのまま30年以上もの間眠っているのです。
買い付けを始める前に、倉庫のオーナーさんにお会いしてご挨拶をしました。
こちらの倉庫はご夫婦(Johnさん&Lisaさん)で運営されているのですが、今回は夫であるJohnさんにお会いして倉庫全体を案内していただきながら、この場所の歴史についてお話を聞くことができました。(以下敬称略)
このヨーロッパ最大規模のジュエリー倉庫に保管されているコスチュームジュエリーは、全てイギリスで製造されたもので、1920年代初頭から工場が閉鎖される1990年代までの間、リバティ、ハロッズ、フォートナム&メイソン、セルフリッジ、ジョン・ルイス、ハウス・オブ・フレーザーなど、イギリスのハイストリートの店舗に商品を供給していました。
こちらの倉庫は、映画、TV、劇場用ジュエリーとして、これまでディズニー、ユニバーサル、MGM、ワーナー・ブラザース、BBC、アマゾン、ネットフリックス、アップルなどにジュエリーを提供してきたそうです(バービー、ウィキッド、ザ・クラウンなど数々の作品に登場)。
高品質のジュエリーはヴィンテージであることが保証されており、倉庫在庫のため、着用されたことのない「デッドストック」です。
この倉庫の起源は、20世紀初頭にまで遡ります。
1918年、現倉庫オーナーLisaの祖父であるSolly Danzigerは成功を求め、彼の父親とともにたった二つの小さなスーツケースを持って、リトアニアから船でヨハネスブルグにやってきました。
彼らはモダンなコスチュームジュエリーやヘアアクセサリーの売買を始め、やがてアフリカ最大のディストリビューターとなったそうです。
ヨハネスブルグのダウンタウンのファッション地区に巨大な倉庫とショールームを購入したSollyは、自らがセレクトしたジュエリーを倉庫に大量にストックし始めました。
Sollyが引退すると、事業は息子Gerald(現倉庫オーナーLisaの父)に引き継がれましたが、野心的で豪放磊落なSollyが長年かけて集めた途方もない量のジュエリー在庫を売るという、ほとんど不可能に思える仕事を任されることになったのでした。
Geraldは見事、数十年にわたって事業を大成功させましたが、1990年代に小売店が中国から直接仕入れを始めたことで、事業を閉鎖することになりました。
彼は、気の遠くなるような量のジュエリーが残された倉庫のドアを閉めたが最後、二度とそのドアを開けることはありませんでした。
ジュエリーたちはその当時のままの状態で箱に収められ、時が止まったかのように放置されて、倉庫の中で歳を重ねていきました。
やがて、現倉庫オーナーのLisaが事業を引き継いでアメリカに移住し、残されたヴィンテージコスチュームジュエリーを世界中のディーラー、デザイナー、TVや映画会社に販売する事業を開始。
イギリス人の夫Johnとの出会いを機に、Lisaが事業の運営・管理をロンドンに移したため、ジュエリーたちは現在ここロンドンの倉庫で眠っているのだそうです。
Lisaが家族から引き継いだ事業を続ける中で、きっと難しい局面も多くあったことでしょう。
途方もない量のジュエリーを長年かけて守りながら、拠点を都度移動させて事業を存続させてきたオーナーご夫妻の努力を思うと、気が遠くなると同時に頭が下がります。
ジュエリーたちを破棄することなく、大切に保管し続けてくださったこと、長い時を経てこうしてジュエリーたちに出会う機会をくださったことに、感謝の念を抱きました。
倉庫やジュエリーのルーツを詳しく知ったところで、いよいよ買い付けへ。
「ここは、一日では見きれないよ。」というJohnの言葉に、ただただ同意するしかない圧倒的な物量。
ジュエリーが長年眠るボックスがうず高く積まれ、ひたすらに続く・・宝の洞窟のようです。
スワロフスキーや、ビジューのストックもたくさん。
こんなところにもジュエリーが・・!
ジュエリーをピックするためのバケツとトローリーをお借りして、頂いたコーヒーを片手にジュエリーピックスタート!
倉庫のスタッフさんたちが、手の届かない位置にある箱を取ってくれたり、ジュエリーの年代を教えてくれたりと、細やかにサポートしてくださるのが有り難い。
ひたすら箱を開けては、心に刺さるものをピックしていくこと5時間以上。
(箱に手の水分を奪われ、いつの間にか指から流血・・)
倉庫にはたくさんの絵画が飾られており、ふと目に入るアートが、疲れを癒やしてくれます。
また、ジュエリーのセレクト中、スタッフの方が倉庫内で熱唱する歌声が響いていて、気持ちが和みました。笑
また別のスタッフさんが、積み上げられた箱を整理しながら激しく咳き込み、"Vintage Dust!!!!!(ヴィンテージの埃)"と叫んでいたのも愉快でした。(年季の入った箱を動かすので、古い埃にまみれる作業なのです。)
心が折れそうになったら摂取する、ハリボー。
去年ドイツでのハードな買い付け中に、買い付け先の社長に差し入れていただいて、身に沁みて感じたハリボーの美味しさと有り難さ。
それ以来ハリボーを常にストックしていて、ロンドンにもたっぷり持参しました。
買い付け中、ハリボーのおかげで踏ん張れる瞬間が必ずあるのです・・!
やっとのことでピックを終えると、倉庫の隅のデスクをお借りして第二段階へ。
持参した鏡を見ながら、全てを試着・検品する作業に入ります。
ジュエリーを手の上で見るのと着用するのとでは、印象が大きく異なることも多いので、一つ一つチェックして篩にかけていきます。
ちなみに、試着に使用する鏡は「人から見た本当の肌色を映し出す」と言われている日本製の堀内鏡(ナピュアミラー)を使用。人から見た着用時のジュエリーの姿を、出来るだけ正確に確認するためです。
倉庫が閉まる時間が近づいてきて焦りながらも、全身全霊で作業を続けます。
良い色。
艶めくカボションイヤリングたち。
オーナーさんから、差し入れでコーラをいただきました。
普段炭酸は飲まないのですが、疲れていると凄く美味しく感じます。有り難い。
ついに試着・検品作業を終え、最終のセレクトが完了しました!
満身創痍。
誰かの宝物になりますようにと願う、素敵なジュエリーたちを買い付けることができました。
今後オンラインショップやPOP UPにてお披露目していきますので、どうぞお楽しみに・・!
次回ブログでは、ロンドンのヴィンテージマーケットでの買い付けの様子をお届けします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。